VOL.16 芸能界修行の終焉
事件は、ある日いきなり勃発した。
時間は少し遡る。L.Aでのレコーディング現場。
スタジオ内にはギターの「スティーブ・ルカサー」ドラムスの「ジェフ・ポーカロ」キーボードは「スティーブ・ポーカロ」バックコーラスの「ボビー・キンボール」ベースは「エイブラハム・ラボリエル」錚々たる顔触れがセッションを行なっていた。ベースのエイブラハム以外はみんなTOTOのオリジナルメンバーだ。ドラムスのジェフはこの数年後に死亡した。死因は謎に包まれている。おそらくコカインのやり過ぎだ。
さて、事件の火種はセッションの合間のブレイクタイムに起きた。実際はテリーの通訳、もしくはコーディネーターの通訳を介して交された会話だったのだが、めんどくさいので、直接会話の形式を採用する。
ボス:「オー!ユー達、最高にロッケンロールだね!! かぁー俺はしびれたねー。実はさ、来年春に東京音楽祭ってのがあるんだけど、ユー達その時テリーのバックバンドやってくれないかね?」メンバー達「オオ、ナイスだね。東京に行けるなら喜んでやらせてもらうよ」と、口々にメンバー達は言う。たかだかセッションの合間のブレイクタイムの無駄話だ。
しかし、完全に間に受けてしまったボスは急遽、日本のTBSの某Pに電話した。そして、来年の東京音楽祭にはTOTOのメンバーが出演する事が決まったと伝えた。そう、伝えてしまったのだ。この後とんでもない事になる。
翌年、東京音楽祭を二ヶ月後に控えたある日、グラミー賞受賞の模様がニュースで伝えられた。
「TOTO、7部門で受賞!!」
日本でも大ニュースだ。それまでは単なるスタジオミュージシャン集団と思われていたTOTOが、エンターテイナーとしても認められたのだ。しかも全世界的に。
そして、そんな事態にもボスは全く動ぜず、TOTOが東京音楽祭にやってくると信じていた。
なんと、TBSでは東京音楽祭告知のTVスポットに・・・当日はTOTOが特別出演・・・というテロップを流した。流し続けた。しつこいほどに。開催される中野サンプラザのチケットは無料だったが、抽選倍率は500倍に跳ね上がった。気を良くしたボスは興行も組んだ。当時渋谷で一番でかいライブハウス「Live in 80」での凱旋コンサートを決めた。無論、バックはTOTO・・・のつもり。
そして、一ヶ月前、LAのコーディネーターを通じて最終確認。
返事は「No Way」あり得ない。
グラミー受賞した直後になんでバックミュージシャンごときで天下のTOTOが日本に行くのか?契約はあるのか?相手にもされない。もう、全く逆立ちしてもバック転しても、のたうち回っても無理。限り無く無理。もはや、TOTOのトイレでも後ろに並べるしかない。
そして、この事実を知ったボスはある日、行方知らずとなった。
そして、僕は逃げ場を失った。
そんな時でも、毎日TBSのテロップは流れ続けた。
もはや一刻の猶予も無い。急遽僕はアメリカに飛んだ。今一度TOTOのメンバーを口説く為に、そしてどうしても無理な場合、替わりのミュージシャンを探さなければならない。TOTOのマネージメントは端から相手にもしてくれなかった。鼻で笑われたようなものだった。
少ないつてをたどってようやく見つかったのは、当時、オリビアニュートンジョンや、シーナイーストンのバックミュージシャンとして活躍していたドラマー、マイクベアードただひとりだった。この時点でまだTBSにはナイショ。開催日の前々日までLAで粘った。しかしもはや刀折れ矢尽きた。マイアミにでも逃げちゃおうかな。ちんたらコカインでも売ろうかな・・・。なんて夢を見ながら帰国の途に着いた。既にTBSにはレコード会社から知らされていた。TBSの通称「ギョロなべP」が激怒しているらしい。
深夜、成田から直行で赤坂のTBS会館に飛び込んだ。今とは全く違う薄暗く狭い廊下を会議室に向かって歩く。視線の先にドアから漏れる光が見えた。真夜中の一時過ぎ。
会議は進行中のようだ。
コンコン・・・ノックする。
「・・・・・・」無言。
おそるおそる扉を開ける。
会議室の中、コの字に座る無言の視線が一斉に僕に向かって刺さる。
中央に座っていたでっぷりと太った、今で言うならばメタボ怪人のような巨体がゆらりと立ち上がった。そして、会議室がびりびりと震えるような声で叫んだ。
「か、上条はどうしたーーーーーー!!!!!!!!!!」
その直後、僕の耳の横を何かが掠めて後方に飛び過ぎ、がちゃーんという音と共に割れた。寿司屋で出すような重厚な湯飲みだった。ギョロなべPは目の前に並べられた湯飲みや灰皿を次々に僕に向けてぶつけて来た。狙い定めて。確実に当たるように。
その飛来してくる物体を避けながら僕は土下座のままコの字テーブルの中央に向かっていざるように進んだ。「申し訳ありません、申し訳ありません」ひたすら呪文の様
に叫びながら。
「お前!この始末どうつけるつもりだーーーー!!!!!!」ギョロなべPはひたすら吠え続け、茶碗を投げる。
幾つかの湯飲みが頭にぶつかり割れた。額から血を流しながら頭を床に擦り付ける僕。
田辺のマネージャーが間に入ってくれて、ようやくギョロなべPは椅子に座った。はあはあと肩で息をしながら。
この年の東京音楽祭には特別ゲストとしてライオネルリッチーの出演が決まっていた。
しかし、TOTOの人気は確実にそれを上回っていたのだ。いきなりぶっ飛んだ番組の目玉企画・・・。今考えてもとんでもない事をしでかしてしまったのだね。思い出したら胸がドキドキしてきた。
結局、この時からこの業界抜けるまで、ボスとは顔を合わせていない。おっさん逃げちゃいましたね。
やってきました、東京音楽祭当日。
受付横にひとつの机が置かれた。その机に僕は座り、来る人来る人おそらく3000人近い人達に頭を下げ続けた。机の下には「都合により急遽TOTOの来日は中止となりました」
全く同じ事を翌日「Live in 80」でも行ない、こちらはチケットの払い戻しをした。
その時の箱のマネージャーはレスラーのような巨漢で、僕は首を絞められながら空中で足をバタバタさせた。殺されてもおかしくなかったね。
そして、その日からTBSの受け付け横には「犬と上条並びに鈴木出入り禁止」のはり紙。
さすがにこの一件で嫌になった。なんとかこの業界から足抜けしなければと思った。
ヤクザのような借金取りは毎日やってくるし、スケジュールはこなさなければならない。ついにサラ金会社も潰れてしまった。後ろ楯の全てが消えてしまった。テリーと二人、途方にくれてしまった。
そんな時、再び赤坂のカツマタさんに拉致られてしまった。またまたヤスナカと二人で天下一ラーメンを啜る。しかし、今回ばかりは僕もボスの行方は皆目わからない。
それでも目の前に電話を置かれ、片っ端から上条の知り合いに電話を掛けさせられた。
そうは言っても僕も知らない。幾つかの雀荘に電話をしたら後が尽きてしまった。仕方ないので、友達に電話を掛けまくった。相手が何か言う前に「すみません、そちらに上条さんいないでしょうか?・・・ああ、そうですか、わかりました。じゃ失礼します」友達はみな「?????」
そんなこんなで夕暮れ。僕が全く役立たずだという事が分かったらしく、カツマタさんは許してくれた。そして、僕を伴って当時ではまだ珍しかった赤坂の韓国クラブに連れて行ってくれた。僕のなにを気に入ってくれたのかいまだに判らないし、その後一度も会っていないが、帰りがけに三万円くれて「なんかあったら相談に来い」と言って僕は解放された。
テリーの最後の仕事がハワイツアーだった。ハワイの「WAVE」というクラブで一週間ライブ演奏を行なうのだ。メンバーのジェフ、リチャード、ビルともこのハワイツアーまでの契約だった。
ハワイに到着してすぐにヤツ等が取った行動は、ヤクとオンナの調達だった。三ヶ月に及ぶ禁欲生活で発狂寸前だったようだ。ホテルのベッドの上にはありとあらゆる薬がぶちまけられた。コカインスティック、ガンジャ、ハッシシ、ヘロインの錠剤、薄いビニール片のようなエルその他見た事も無いような様々なおくすり。プラス、パツキンネ−チャン達。このハワイツアーでは一度も海を見なかった。毎日夕方に起きて飯を喰い、クラブに行って夜中まで演奏する。それから、朝方ホテルに戻り、延々とドラッグアンドアルコールパーティ。今さら、僕がドラッグに手を染めたかどうかはどうでもいいことだが、結論としては、酒が一番だと思う。
さて、このツアー中僕が考えた事は、このままテリーを日本に帰してしまうと、ボスが売り飛ばしてしまったテリーの営業権がなんらかの形で発現し、最悪身に危険が及ぶ事もありうるという事だ。テリーとも相談し、彼女がしばらく日本に帰らなくても良いようにしなければならない。少なくとも一年以上。様々な手を考えて奥の手を使った。これは、まあ時効だろうけれども法律に関わるので書けない。まあ、いずれにしてもこのツアー終了と共に外人メンバー達は本国に帰り、テリーとは空港で別れた。
そして僕とキヨミは二人で帰国した。これでともかく全てが終わった。芸能界からは完全に足を洗った。
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コメント
二回目の書き込みです!鈴木さんは有る意味、僕(てつです)の兄弟子になる人なので、良かったらぜひメールを下さい!上条の親父の話を色々したいと思っております!首を長くして待ってます!
宜しくお願いします!
投稿: きかん坊 | 2009年4月26日 (日) 00時44分
セッックスお願いしまくるつもりで会ったら向こうから誘ってきたしwwww
まさかこんな簡単にヤれて大金貰えるなんて思ってなかったわ(^^;
今までの童_貞人生って一体・・・orz
http://ikisou.sersai.com/HA1hoeT/
投稿: こあぁぱおっふwww | 2009年5月10日 (日) 21時34分